・*不器用な2人*・
第57章/遠足
翌朝。校門前からバスは発車した。
隣りの県の山奥にあるという森林公園まではバスで2時間もかかるらしい。
もっと早く着く電車はないのかと疑問に思ったけれど、山奥すぎて途中から路線が途切れてしまうのだと猿渡さんから聞いた。
席はめぐちゃんの隣りに座った。
梶君は淳君と、浅井君は井上君と、木山君はあまり知らない誰かと。
それぞれ座席は大きく離れていた。
バスが出発を始めると、バスガイドさんがマイクを通して音の割れたアナウンスを始める。
殆ど誰も聞いていなくて、生徒たちの大声はアナウンスの声すらもかき消されてしまっていた。
ケータイで離れた席に座っている梶君と他愛もないやり取りをしながら、私はボーッとしていた。
後ろの席に座った女子たちがしきりに木山君の悪口を言っていたけれど、それすらも聞き流してしまった。
パーキングエリアで降りた時だった。
隣りのバスから丁度鈴木君たちが出てくるところだった。
久し振りの顔合わせに向こうも少しだけ驚いた様子を見せたものの、「最近どう?」と答え辛い挨拶をされてしまった。
「彼氏と同じクラスで良かったじゃん」
苦い笑顔で言われてしまい、私は少しだけ申し訳ない気持ちになりながらも「ありがとう」と答えた。
「風野さん、俺ら今度合コンやるんだけど、よかったらどッスか」
背後から顔を覗かせた鈴木君の友人から言われ、私は慌てて断る。
「バッカ、風野は彼氏いるんだから誘ったら駄目だろーが」
鈴木君が笑いながら男子を小突き、売店へと向かって行ってしまった。
後から降りて来た木山君が、私と鈴木君達を数度見比べて、売店へと向かって行く。
私は先ほどクラスメートたちが言っていたことを思い出し、木山君を慌てて呼び止めた。
彼はいつもより少しだけ表情が穏やかで、「何?」と優しい声で振り返ってくれた。
いざ話しかけてはみたものの特に話題なんて考えてもいなかったせいで、私は視線を泳がせてしまう。
「最近あまり話してないから寂しいなって思って……」
適当にそんなことを言ったら、笑われてしまった。
「風野さんって時々彼氏もちってことが信じられない言動するよね」
木山君はそう言うと、私の髪をクシャクシャと撫でた。
「ごめんね、素気なくて」
彼はそれだけ言うと売店の方へと歩いて行ってしまった。
謝ってほしかったわけではないんだけどな……、そう思いながらも私は彼の背中を見送ると、もう1度バスへと戻った。
パーキングエリアからまた1時間かかって、森林公園へと着くことができた。
後半は山道ばかりで何度もカーブがあり、縦揺れも激しかった。
「なんか遊園地のアトラクションみたいだね」と、めぐちゃんが笑顔で言っていたので同意するしかなかったものの、正直道の整備のなさに唖然とするしかなかった。
到着して外へ出ると、鳥のさえずりが必要以上に五月蠅かった。
――うっわ、ド田舎!!
自然の良さなんて感じる暇もなく私はそんな感想を心の中で呟いて、ケータイを開いてみた。
案の定の圏外だった。
――一晩でもこんなところに泊まったら死ねるわ私……。
そんなことを考えていると、背後から軽い衝撃があった。
慌てて振り返ると、梶君が靠れかかっていた。
「どうしよ、俺今すっげ気分悪い…」
そう呟く梶君に、続いて出て来た井上君が「トイレ行ってきなよ」と涼しげに言う。
「井上、お前ってほんと木山並に淡白だな」
梶君が湿った目で井上君を睨むと、随分と遅れて降りて来た木山君が「淡白の代名詞を俺にするなよ」と呆れたように言った。
隣りの県の山奥にあるという森林公園まではバスで2時間もかかるらしい。
もっと早く着く電車はないのかと疑問に思ったけれど、山奥すぎて途中から路線が途切れてしまうのだと猿渡さんから聞いた。
席はめぐちゃんの隣りに座った。
梶君は淳君と、浅井君は井上君と、木山君はあまり知らない誰かと。
それぞれ座席は大きく離れていた。
バスが出発を始めると、バスガイドさんがマイクを通して音の割れたアナウンスを始める。
殆ど誰も聞いていなくて、生徒たちの大声はアナウンスの声すらもかき消されてしまっていた。
ケータイで離れた席に座っている梶君と他愛もないやり取りをしながら、私はボーッとしていた。
後ろの席に座った女子たちがしきりに木山君の悪口を言っていたけれど、それすらも聞き流してしまった。
パーキングエリアで降りた時だった。
隣りのバスから丁度鈴木君たちが出てくるところだった。
久し振りの顔合わせに向こうも少しだけ驚いた様子を見せたものの、「最近どう?」と答え辛い挨拶をされてしまった。
「彼氏と同じクラスで良かったじゃん」
苦い笑顔で言われてしまい、私は少しだけ申し訳ない気持ちになりながらも「ありがとう」と答えた。
「風野さん、俺ら今度合コンやるんだけど、よかったらどッスか」
背後から顔を覗かせた鈴木君の友人から言われ、私は慌てて断る。
「バッカ、風野は彼氏いるんだから誘ったら駄目だろーが」
鈴木君が笑いながら男子を小突き、売店へと向かって行ってしまった。
後から降りて来た木山君が、私と鈴木君達を数度見比べて、売店へと向かって行く。
私は先ほどクラスメートたちが言っていたことを思い出し、木山君を慌てて呼び止めた。
彼はいつもより少しだけ表情が穏やかで、「何?」と優しい声で振り返ってくれた。
いざ話しかけてはみたものの特に話題なんて考えてもいなかったせいで、私は視線を泳がせてしまう。
「最近あまり話してないから寂しいなって思って……」
適当にそんなことを言ったら、笑われてしまった。
「風野さんって時々彼氏もちってことが信じられない言動するよね」
木山君はそう言うと、私の髪をクシャクシャと撫でた。
「ごめんね、素気なくて」
彼はそれだけ言うと売店の方へと歩いて行ってしまった。
謝ってほしかったわけではないんだけどな……、そう思いながらも私は彼の背中を見送ると、もう1度バスへと戻った。
パーキングエリアからまた1時間かかって、森林公園へと着くことができた。
後半は山道ばかりで何度もカーブがあり、縦揺れも激しかった。
「なんか遊園地のアトラクションみたいだね」と、めぐちゃんが笑顔で言っていたので同意するしかなかったものの、正直道の整備のなさに唖然とするしかなかった。
到着して外へ出ると、鳥のさえずりが必要以上に五月蠅かった。
――うっわ、ド田舎!!
自然の良さなんて感じる暇もなく私はそんな感想を心の中で呟いて、ケータイを開いてみた。
案の定の圏外だった。
――一晩でもこんなところに泊まったら死ねるわ私……。
そんなことを考えていると、背後から軽い衝撃があった。
慌てて振り返ると、梶君が靠れかかっていた。
「どうしよ、俺今すっげ気分悪い…」
そう呟く梶君に、続いて出て来た井上君が「トイレ行ってきなよ」と涼しげに言う。
「井上、お前ってほんと木山並に淡白だな」
梶君が湿った目で井上君を睨むと、随分と遅れて降りて来た木山君が「淡白の代名詞を俺にするなよ」と呆れたように言った。