・*不器用な2人*・
第58章/気付けないこと
バーベキュー区域に戻ると、猿渡さんと、同じグループの男子が駆け寄って来た。
「木山君、大丈夫だった?」
そう聞かれ、私と梶君は顔を見合わせる。
「うん、大丈夫だよ。本人も結構落ち着いてたし」
梶君はそう言って彼らの横を素通りすると、隅の方に突っ立っていた淳君の肩をポンと叩き、小声で何か言っていた。
淳君は表情を変えないまま梶君に何か答えるとまた大人しく俯いた。
あれからBクラスの担任に叱られたらしい鈴木君は不愉快そうな態度をとりながらも私たちを待っていてくれたらしい。
「どうだった」と荒い声で聞かれたので、「大丈夫」とだけ答えておいた。
「あの中西って奴ら大したことないな。殴ったらすぐ歯折れたぞ。乳歯かっての」
「中西はお前と違ってDQNではないからな、あと人の顔面殴るなよ」
梶君は呆れたように呟いて鈴木君の背中を軽く蹴った。
「木山に前ボコられたんじゃなかったっけ。
何で庇っちゃってんの鈴木」
梶君に聞かれた鈴木君は相変わらずのオールバックを撫でながら首を傾げた。
「俺木山に何かされたことあったっけ」
「あったじゃねーか。弟虐めたお礼まいりされてたじゃねーか」
戻って来ためぐちゃんにボソッと言われ、鈴木君の表情が硬直した。
「浅井が戻って来てないけど、どうした」
皆が帰り支度を始めた頃、浅井君の班の人が梶君に向かって怒鳴った。
辺りを見渡した梶君が「ほんとだ」と呟く。
あの後めぐちゃんたちと一緒に戻って来たとばかり思っていたけれど、まだ公園の方にいるのだろうか。
「私、呼んでくるよ」
私が言うと、梶君は小さく頷いた。
木山君が座っていたはずの場所に、浅井君が腰をおろしていた。
「浅井君、皆が呼んでたよ。
木山君は一緒じゃないの?」
私が声をかけると浅井君は慌てたように顔を上げて、困ったように笑った。
「なんか俺と一緒にいるのは梶と一緒にいるよりも胸糞悪いとか言ってどっか行っちゃ立った」
「いや、そこは引き留めようよ」
そう言いつつも辺りを見渡す。
敷地は広いから全部探すなんて途方もない。
「木山君が行きそうなところって分かる?」
私の言葉に浅井君は首を傾げながら頬を掻く。
「1人になれる綺麗な場所、とか」
「何それどこそれ」
具体性のない答えに肩を落として、私はその場を離れた。
「木山君、大丈夫だった?」
そう聞かれ、私と梶君は顔を見合わせる。
「うん、大丈夫だよ。本人も結構落ち着いてたし」
梶君はそう言って彼らの横を素通りすると、隅の方に突っ立っていた淳君の肩をポンと叩き、小声で何か言っていた。
淳君は表情を変えないまま梶君に何か答えるとまた大人しく俯いた。
あれからBクラスの担任に叱られたらしい鈴木君は不愉快そうな態度をとりながらも私たちを待っていてくれたらしい。
「どうだった」と荒い声で聞かれたので、「大丈夫」とだけ答えておいた。
「あの中西って奴ら大したことないな。殴ったらすぐ歯折れたぞ。乳歯かっての」
「中西はお前と違ってDQNではないからな、あと人の顔面殴るなよ」
梶君は呆れたように呟いて鈴木君の背中を軽く蹴った。
「木山に前ボコられたんじゃなかったっけ。
何で庇っちゃってんの鈴木」
梶君に聞かれた鈴木君は相変わらずのオールバックを撫でながら首を傾げた。
「俺木山に何かされたことあったっけ」
「あったじゃねーか。弟虐めたお礼まいりされてたじゃねーか」
戻って来ためぐちゃんにボソッと言われ、鈴木君の表情が硬直した。
「浅井が戻って来てないけど、どうした」
皆が帰り支度を始めた頃、浅井君の班の人が梶君に向かって怒鳴った。
辺りを見渡した梶君が「ほんとだ」と呟く。
あの後めぐちゃんたちと一緒に戻って来たとばかり思っていたけれど、まだ公園の方にいるのだろうか。
「私、呼んでくるよ」
私が言うと、梶君は小さく頷いた。
木山君が座っていたはずの場所に、浅井君が腰をおろしていた。
「浅井君、皆が呼んでたよ。
木山君は一緒じゃないの?」
私が声をかけると浅井君は慌てたように顔を上げて、困ったように笑った。
「なんか俺と一緒にいるのは梶と一緒にいるよりも胸糞悪いとか言ってどっか行っちゃ立った」
「いや、そこは引き留めようよ」
そう言いつつも辺りを見渡す。
敷地は広いから全部探すなんて途方もない。
「木山君が行きそうなところって分かる?」
私の言葉に浅井君は首を傾げながら頬を掻く。
「1人になれる綺麗な場所、とか」
「何それどこそれ」
具体性のない答えに肩を落として、私はその場を離れた。