・*不器用な2人*・
第61章/家族*3
翌朝。
リビングへと降りて行くと、木山君がネクタイを締めているところだった。
――普段はだらしなく着崩しているのに珍しい……。
私がジッと見ていると、視線に気付いた木山君が苦笑いを浮かべながら此方を振り返る。
「風野の父さん厳しいなー。ネクタイがだらしないとかシャツがよれてるだとかなんか細かすぎて……」
そう言う木山君の後ろでは父がソファにふんぞり返って新聞を読んでいるところだった。
「男子高校生なんだからシャツがよれてても良いじゃない!
サラリーマンじゃないんだから!」
私が慌てて文句を言うと、父が仏頂面のまま顔を上げる。
「いや、服装の乱れは心の乱れだ」
「そう言うのは進学校に通ってる学生に言う言葉だから!
DQN高に通っておいて今さら心の乱れとかどうでもいいから!」
私は肩を落としながら木山君に「ごめんね」と言う。
木山君は絞めていたネクタイをもう一度緩め、笑いながら「いいよいいよ」と答える。
「本当お世話になりました」
玄関で深々と頭を下げる木山君に母は「気にしないで、またいつでもいらっしゃい」と笑い掛けたものの、父はやはり仏頂面のまま彼のことを見下ろしていた。
「やっぱりその服装はだらしないと思うぞ。
学校に行く時くらいピアスは外していきなさい」
グチグチと説教を続ける父を無視して、私は木山君の腕を引っ張って家を出た。
「うちの親、昔からあんな感じなの。
特に父親の感じ悪さが半端なくて、過保護なのに冷たくって、どう接していいのやら」
私が肩を落としながら言うと、木山君が声を立てて笑う。
「いいお父さんだと思うよ。ちょっと自分の父親にしたいとは思わないし就職先の上司があんな感じだったら困るけど」
正直な感想に私も同意する。
「出勤してから始業まで身だしなみチェックされそうだよね」
「あ、絶対される。俺なんて茶髪にピアスだよ。もう絶対指導対象」
そんなことを言い合ってひとしきり盛り上がった後。
「でも、風野のお父さん、俺の眼のこと何も言わなかった」
木山君がポツリと言った。
私は昨日のことを思い出す。
母や父が彼に会った時、木山君は両方の目を出していたはずだった。
そのことについて両親はノータッチだったのだ。
リビングへと降りて行くと、木山君がネクタイを締めているところだった。
――普段はだらしなく着崩しているのに珍しい……。
私がジッと見ていると、視線に気付いた木山君が苦笑いを浮かべながら此方を振り返る。
「風野の父さん厳しいなー。ネクタイがだらしないとかシャツがよれてるだとかなんか細かすぎて……」
そう言う木山君の後ろでは父がソファにふんぞり返って新聞を読んでいるところだった。
「男子高校生なんだからシャツがよれてても良いじゃない!
サラリーマンじゃないんだから!」
私が慌てて文句を言うと、父が仏頂面のまま顔を上げる。
「いや、服装の乱れは心の乱れだ」
「そう言うのは進学校に通ってる学生に言う言葉だから!
DQN高に通っておいて今さら心の乱れとかどうでもいいから!」
私は肩を落としながら木山君に「ごめんね」と言う。
木山君は絞めていたネクタイをもう一度緩め、笑いながら「いいよいいよ」と答える。
「本当お世話になりました」
玄関で深々と頭を下げる木山君に母は「気にしないで、またいつでもいらっしゃい」と笑い掛けたものの、父はやはり仏頂面のまま彼のことを見下ろしていた。
「やっぱりその服装はだらしないと思うぞ。
学校に行く時くらいピアスは外していきなさい」
グチグチと説教を続ける父を無視して、私は木山君の腕を引っ張って家を出た。
「うちの親、昔からあんな感じなの。
特に父親の感じ悪さが半端なくて、過保護なのに冷たくって、どう接していいのやら」
私が肩を落としながら言うと、木山君が声を立てて笑う。
「いいお父さんだと思うよ。ちょっと自分の父親にしたいとは思わないし就職先の上司があんな感じだったら困るけど」
正直な感想に私も同意する。
「出勤してから始業まで身だしなみチェックされそうだよね」
「あ、絶対される。俺なんて茶髪にピアスだよ。もう絶対指導対象」
そんなことを言い合ってひとしきり盛り上がった後。
「でも、風野のお父さん、俺の眼のこと何も言わなかった」
木山君がポツリと言った。
私は昨日のことを思い出す。
母や父が彼に会った時、木山君は両方の目を出していたはずだった。
そのことについて両親はノータッチだったのだ。