・*不器用な2人*・
「どうしたんだよ、学校休んでる間に、お前何かあったのかよ」

浅井君の言葉に、木山君は小声で答えた。

「何かあったわけでは全然ないんだけど」

その声は激しく震えていて、ボリュームが調整されていなかった。

「ただなんかもう……、こんな時間がこれからも延々と続くのならいつ終わっても良いかなって、そう思っただけで」

「それって何かあったってことだよな!」

浅井君が怒鳴るのを、梶君が止めた。

「あんまり刺激するなって。何か不味いこと言ったらあいつ多分飛び降りるよ」

梶君はそう小声で言うと、木山君から地面へと視線を移す。

その瞬間を見たくないとでも言いたげだった。

「代り映えがないんだよ、生きていてずっと毎日、何したってそう。
努力したからって別に何かが良い方向に進むなんてことはまったくなくって、ただ意味も分からないまま意味の分からない言葉を投げかけられるんだ」

木山君は、半袖だった。

ピンクと茶色が溶け合った何とも言えない色が、肘から手首までの肌を覆い尽くしていた。



「だからって何も死ぬことはねーだろ」

浅井君はそう言いながら少しずつ木山君へと近づいて行く。

「何があったかよく分からないけど、別に飛び降りなくても、他にいい方法とか考えられるだろうし」

始業を告げるチャイムが鳴ると、校舎は一気に静かになった。

今この場にいない淳君はもう授業を受けているのだろうか。

そんなことをフッと考えながらも、私は事の成り行きを見守るしかなかった。

「他の方法なんていくらでも考えたって!もう16も生きたんだよ?その間に考える時間なんて山ほどあって、でもどれも駄目だったから死のうと思ったんじゃないか。生き続ければいいことあるなんて、いいことを経験した浅井だからこそ言えるんじゃねーの」

木山君はそう言うと、フェンスを片手で掴んで浅井君に向きなおる。



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