オレンジ
オレンジ時
このクソ暑い中、ベタベタくっついて歩いているカップルを横目で流して、
俺はつぶやいた。
「バカップルってわかんねーよなぁ?」
「なんで?」
黒目がちな瞳が俺を映す。
長いストレートの髪が、音をならして肩に落ちた。
クソ暑いはずなのに、【えーり】は汗1つかいていなかった。
「暑くねー?見ててさ」
「暑いけど、幸せなんだよ」
そう言って、えーりは前のほうに視線を戻した。
あんなバカップルが幸せなんだって、俺には理解できなかった。
涼しいところで密着するならまだわかるが、この炎天下で…
しかも歩きながら…。
余計体温が上がるだけではないか。
「わかんねぇ…」
「【しょーへー】には、わかんないかもね」
「べつにいいけど」
恋なんてしたいと思ったことがない。
彼女をほしいなんてべつに思わない。
バカップルの気持ちは、まだまだわかりそうにない。