オレンジ
「だってしょーへーは、恋をしていないでしょ?」
「えーりはしてんの?」
「まぁね」
親友が恋をしてようがしてまいが、俺には関係ない。
異性の親友どうしだけど、俺はえーりのことなんとも思ったこともないし。
友達が『えーりちゃんって、美人だよなぁ』そう言う理由もわからなかった。
□■
「おじゃましまーす」
毎日のごとく、俺んちに入ってきた。
「わー涼しいっ!天国」
家の中は、クーラーがきいていて快適だった。
クソ暑い外がうそみたいに。
「今日はおばさん何時になるの」
「んー、わかんないっ」
俺より先に入って、ソファーに寝転んだ。
えーりとは、おととしからの付き合い。
隣の家に引っ越してきたえーり。
遅くまで働いているえーりのおばさんの代わりに、母さんがえーりを家に呼んだ。
夜ご飯だけは毎日いっしょだ。
だから、えーりは俺んちのことを知っているし、
えーりも俺んちのことを知っている。
えーりは世間上手なようで、母さんとも息投合していた。