オレンジ
えーりは、俺んちの鍵の隠し場所だってわかる。
俺が委員会で遅れたときは、えーりは俺んちですでにくつろいでいた。
俺も母さんも、えーりのことは信用しきってるから構わないけど。
でも…。
えーりは、好きなひとがいるんだぞ。
好きでもない男の家に入って、今なんかソファで寝転がって…
こんなに無防備だ。
親友、だからいいけどさ。
えーりはこんなんでいいのか。
えーりでもなんでも、女の不思議なところだよなぁ…。
「ね、ねっ!しょーへー、恋の悩み聞いてくれる?」
「あー俺、相談とかむりっ!」
「わかってるけどー、聞いてっ」
えーりはむりやり隣のソファに座らせた。
「名前は、言わないけどね。あたしの好きな男って、鈍感でお人よしで…
とりあえず、ばかなの」
「…好きなひとのこと、こんなボロクソ言っていいわけ?」
「いいのーいいの。ほんとう、ばかなんだもん」