オレンジ
「俺って、えーりのこと好きなんだろうな…」
これも独り言。
空に消えて、なくなるかと思ってた。
「おそいよ。ばか」
小さいけれどはっきりと聞こえた。
よく通る声。
振りかえれば、えーりは起きていると気づく。
大きな瞳から涙を流して、それでもそらさずに強く俺を見つめる。
オレンジ色の光が差しているからか、頬はほんのり赤かった。
「起きて…?」
「おそいよ。ばか…」
質問には答えずに、えーりは言葉を重ねる。
涙の量が多くなった。
抱きしめられずにはいられない。
狭い滑り台の中のえーりを俺は抱きしめた。