オレンジ
「なぁ、俺もちゃんと男なんすけど」
「うん。そーだね」
言われなくてもわかるよ。
がっしりした背中とか、あたしを軽々持ち上げた腕とか、もう男だよ。
しょーへーに目を向けると、しょーへーはぼーっとしていた。
少し苦しそうな顔で。
「しょーへー?」
しょーへーの目の前で手を上下に振る。
そのあたしの手をしょーへーがつかんだ。
いつにもなく真剣な顔に、あたしはきょとんと見つめ返す。
「えーり、俺に構うより好きなやつに行けよ。そのうち好きなひとに誤解されっぞ」
しょーへーは、あたしが好きなのは自分だと気づいてない。
だから、そんな方向違いなことを言っている。
「…しょーへーって、本当に鈍感だよね」
「ほっとけ!」
「照れてるーっ」
そんなしょーへーの照れた顔をあたしは写メろうとした。
…あたしはほんとうは、写真を撮りたいんじゃなくって、これからの嫌な予感をしょーへーに実行させたくなかったから。