オレンジ



口げんか、らしきものはあたしが勝利した。

腕を組んで、ほこらしげにしょーへーをにらみつけた。



「とくに…。別に」


「あたしに近づかないんじゃなかったの?」



思ってもないことをどうして言ってしまうんだろう。


近づかない、なんて嫌なのに。


距離を置くってことを思い出させてしまった。



これがただのけんかなら、どんなによかったか。



「そうだ…

「えーりちゃんっ!」


しょーへーが言いかけた言葉をあの男が消した。


あたしを好きな、アタックしてくる男の子。



…しょうじき、今は話しかけてもらいたくなかった。

あたしはしょーへーの言葉がほしかったのに。



「えーりちゃんっ」

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