オレンジ

□■



暑苦しくなるほど走って、俺が先に家に入った。



「す・ず・しぃー」


「は、はやっ…」


俺より数秒後、息切れして疲れきっているえーりが入ってきた。



スーパーから家まで、どっちが速いか。


おごりを賭けられて俺はやる気になった。



「負けたぁ~っ!悔しいッ」


倒れるように入って、玄関に倒れこんだ。




「えーり、だいじょぶか?」


「久しぶりに走ったんだもーん」



走って、疲れているはずなのに、えーりの顔は笑顔だった。




「ん。持ってくから」


「ありがと」


えーりの手から買い物袋を受けとって、俺は先にリビングに入った。


クーラーを効かせたままにしたリビングが涼しくて気持ちいい。



俺は冷蔵庫の中に買ってきたものを入れて、いつまでたっても来ないえーりを呼んだ。



「ふぁぁ~い」


なんて気の抜ける返事。

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