初カレ
あたしたちは海のそばにある公園のベンチに座りながら話した。
先輩の友達の話とか本当に何の変哲もないことだけど、あたしにはそれが幸せだった。



「あのさ…」



ちょっとの沈黙の後、先輩は口を開いた。



「先輩って呼ぶのやめにしない?」

「へ?」

「せっかく付き合ってるのに何か寂しいなーなんて思ったり」



そっか。
そんなこと全然気がつかなかった。
言われてみれば汐里だって彼氏の名前を呼び捨てにしてる。



「俺も夏帆ちゃんて呼ぶのやめるから」

「えっ?」

「…夏帆」



初めて家族以外の男の人から呼び捨てにされた。
何だかくすぐったい。



「ほら!夏帆も俺のこと呼んで!」

「ええー…恥ずかしいです」

「早く早く」



先輩はあたしの反応を面白がってるようにも見える。
先輩は余裕なんだな、あたしはこんなに緊張してるのに。
そう思ってるのに先輩の顔を見ると、言わなきゃいけないような、そんな変な感覚になる。
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