初カレ
「な、渚…」



意を決して呼んでみる。
思ってたよりも百倍くらい緊張した。
先輩は満足そうな顔をした。



「無理しなくてもいいけど、ちょっとずつそうして!敬語も使わなくていいし」

「はい…じゃなくて、うん」

「あはは!かわいーっ」

「かっ!!!!かわいくないよっ」

「おっ♪敬語使わない方がいい感じ」

「もーっ!!!!」



すっかり先輩のペースに乗せられてしまうけど、緊張が和らいだ。



「ね、夏帆」

「ん?」

「もう一回呼んで」

「…渚」



下の名前を呼んだだけなのに、こんなにもドキドキしてしまう。



「ありがと。めちゃくちゃうれしい」



先輩はあたしを抱き寄せた。
こんなことされるのは初めてで、心臓が口から飛び出そうになる。
だけど、あたしの頭の上から響く渚の声が少しだけ心地よかった。
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