初カレ
沈黙が少し苦しい。
渚と触れてる部分が熱くて、そこにばっかり集中してしまう。



「………」



渚は黙ったままだ。



(なんとか言ってよ~)



と思っていると渚はさらにギュッと手の力を強めた。
思わずあたしの体に力が入る。



まるですべてがスローモーションのようだった。


ゆっくりと渚の顔があたしの顔に近づいてくる。


(あ…もしかして…)



そう思ったら何だか勝手に目を閉じていた。
そして、渚の唇があたしの唇に優しく重なった。



きっと時間にしたらほんの一瞬。
だけどあたしにはとても長く感じた。



「ごめん。ガマンできなかった」



渚はそう言った。
あたしは自分の顔がかーっと熱くなるのがわかった。
それなのに、渚はいつもと変わらない。



「あの…」

「んー?」

「あたし、キスしたの初めてなの」

「マジ!?」

「うん…マジ。」

「………」

「引いた、よね」



渚が無言なのがそう語ってるみたいだった。
< 42 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop