初カレ
渚は一緒に帰るときはちゃんと家まで送ってくれて、バイバイのキスをしてくれる。
それはほっぺだったり、唇だったりいろいろ。
最初は緊張しっぱなしだったあたしも、少しは慣れてきた。
手を繋いで、キスをして。それだけで幸せだったりした。



汐里が言っていた『大人のキス』のことなんてすっかり忘れていた。
だってあたしにはまだまだ先のことで、今のところ縁がないと思っていたからだ。



「夏帆、まだ時間大丈夫?」

「うん!何で?」



渚と敬語なしで話すのも自然になった。



「海、行かない?」

「うん!」



渚に言われて、学校近くの渚がいつもサーフィンをしている海の浜に降りた。



もうすぐ日も暮れる時間。
夕焼けのオレンジ色が、夜の闇と溶け合っていた。
渚が砂浜に腰を下ろしたから、あたしも隣に座った。



「波の音聞くと、やっぱり落ち着く」



渚はそういって、水平線の方を眺めていた。
あたしはそんな渚の横顔を見つめた。
渚の顔がオレンジ色に染まって、キレイ。



(まつげ、長いなぁ~。……横顔だけでもかっこいい)



なんて考えていると、渚と目があってしまった。


「見とれてた?」


冗談っぽく渚が言う。


「…うん、見とれてた」


正直にあたしは答えた。
というか、渚に見つめられると嘘なんてつけない。
< 45 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop