初カレ
「え…?」

突然すぎて、頭の回転がついていかない。
あの、波崎くんがあたしを好き?
意味がわからない。

「もう一回言うけど!俺、名波さんのこと好きなんだ」

念を押すかのように波崎くんは言った。
真っ直ぐな瞳はあたしを一直線に見ている。
そんなあたしたちをいろんな人が取り囲む。
そんな輪から少し離れたところに渚が立っているのがわかった。

「あたし、彼氏いるから」

「知ってる。だけど、好きなんだ」

「えっと…」

「俺にしとけよ!幸せにするし」

波崎くんの気持ちは嬉しかった。
誰かに好きって言われる事は悪い気はしないものだ。

「ごめんなさい!波崎くんの気持ちはうれしい」

「じゃ、いいじゃん」
「良くないの!あたしは今すごく幸せだし、これから先も、渚とじゃなきゃ幸せだって思えないの。…だからごめんなさい」

あたしはそう答えた。

「そっか…」

波崎くんはそう言って黙ってしまった。
あたしもどうしたらいいかわからなくて固まってしまう。

「悪い!困らせて!はっきり言ってくれてありがとな!その方が諦めつく」

そう言って波崎くんは手を差し出した。

「?」

「握手!これからもいい友達ってことで」

ニカっと波崎くんは笑った。
だからあたしも手を差し出した。
波崎くんはぎゅっと手を握るとみんなのもとに戻っていった。

あたしはそんな波崎くんのうしろ姿を見たあと渚の方を見た。


渚は優しい顔で笑っていた。
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