今日も、明日も、明後日も
「あの、あなたは……」
「俺は橘伊織。伊織でもいおりんでもお好きにどーぞ」
橘、伊織。そう名乗った彼は冗談交じりに言ってお茶を一口飲む。
……伊織、さん。最初のインパクトが強烈すぎて気付かなかったけれど、こうして正面から見ればなかなか整った顔をしている人だと思う。スッと通った鼻筋と、猫のような丸い瞳、そしてこの愛嬌。きっと周りに好かれるタイプの人だ。
「君は鈴ちゃん、だよね?千鶴子さんから話は聞いてます」
「あの、おばあちゃんとはどんなご関係で」
「どんな関係に見える?」
「こ…恋人、とか」
「あはは!恋人!確かに俺があと50歳上だったら千鶴子さんと付き合いたかったかも」
真面目な顔で答えた私をからかうように言うと、伊織さんは湯呑を一度テーブルの上に置いた。
「けど残念、不正解!俺は……言うなら茶飲み友達、みたいな感じ?」
「茶飲み友達……?」
「学生時代から千鶴子さんにはお世話になっててさ、時々遊びに来てはそこの縁側でお茶飲んでたの」
そう彼が視線で指す先には、庭とこの部屋を繋ぐ縁側がある。そういえばおばあちゃんもここが大好きで、よく日向ぼっこをしていたっけ。
そんな姿を彼も思い出しているのか、その目はそっと細められた。