今日も、明日も、明後日も
『鈴ちゃん、苺買ってきたよ』
『また苺?おばあちゃん本当に好きだね』
『えぇ。毎年この時期が楽しみなの』
『じゃあ、私の分も一つあげる』
春になると毎日のようにおばあちゃんが買ってくる苺は、ハズレなしのどれも必ず甘い苺。
私は特別好きとは思わなかったけれど、おばあちゃんがそれを食べては嬉しそうに笑うから、つられて笑う毎日だった。
そういえば、おばあちゃんが亡くなる何日か前に、『もうすぐ苺の季節だね』って話をしたばかりだったっけ。
『じゃあ、今年は苺狩りでも行く?』
『あら、いいの?』
『うん。バスでツアーでも予約して、たまには』
『ツアー……いいわねぇ、楽しみ。早く春にならないかしら』
結局ツアーは予約出来ていないまま、苺の季節になってしまった。
「……今年は食べさせてあげられなかったなって、思って」
ぽつりと呟いた言葉に、伊織さんは苺のパックを持つ私の手にそっと手を添える。