私だけの着信音
『ゴメン、少し遅れる』
待ち合わせの時間をとっくに過ぎての着信に、私は平然を装い「待ってるね」と、通話を切った。
本当は知ってるんだ。
二股をかけられている事を。
けれども、彼に問いただせないのは、それでも彼といたいと思ってしまう私の弱い気持ちがあるから。
相談したくて、勢いで幼馴染みに手紙を出したけど、返事は返ってこなかった。
無理もないか。数年ぶりの手紙だし。
溜め息をつきながら、近くのコンビニに足をはやめたその時。
後ろから走って来た人とぶつかり、バッグの中身が地面に散らばった。