さ迷う恋心【TABOO】

「冗談でしょう?」

 彼はグラスに口をつける。薄い唇に吸い込まれる透明の液体。喉仏が上下に動き、真っ白なシャツのボタンを一つずつ外す男は、もうアイドルの顔をしていなかった。

「こっちに、おいで」

 催眠術にかかったように彼の手に導かれて、真っ白なシーツに倒された。

「人間って愚かだよね。自分たちの種族以外は徹底的に排除しようとする。現代はまだ生きやすいけど、中世じゃ僕たちの仲間は大分殺された。

 僕が怖い? 大丈夫、殺すほどは吸い取らない」

 首筋に刺すような痛みが走る。

 刺されたんだ……指先から冷たくなっていくのに抵抗はできない。体が動かない。

「だけど、僕の秘密を誰かに喋れば、僕はまた君に会いに来る。そして、君に次の日はない」

 薄れていく意識の中で、自分はこの為だけに部屋に呼ばれんだと悲しくなった。

 次に彼に会いたくなったら、この秘密を誰かに話すしかない。

 そして、私は二度と目覚められなくなる。


さ迷う恋心
THE END
2013 1 26




< 4 / 4 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:8

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

およしなさいよ、うさぎさん。

総文字数/46,388

恋愛(純愛)16ページ

表紙を見る
溺愛トレード

総文字数/50,028

恋愛(ラブコメ)106ページ

表紙を見る
飼い犬に手を噛まれまして

総文字数/197,616

恋愛(オフィスラブ)488ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop