バーテンダー


久しぶりに出て来た都内で、偶然、フラリと入ったレトロ風のこのバ―に、わたしの理想とする男が、ツンと澄ました表情で軽やかにシェーカーを振っていた。


「入ってまだ、三日目なんです。よろしくお願いします。お近づきの印です」


何もオ―ダ―していないのに差し出されたピンク色のカクテル。


「もしかして、サービス?」


「はい、楊貴妃です。美味しいですよ」


ここに来るまで、大学時代の女友達四人と女子会を開いていた。


KOホテルのカクテルバー。


三時間カクテル、ドリンク飲み放題の上、ホテルのコース料理が付いて六千円。


割安で、料理も美味しくて、上機嫌だった。



そう……みんなの近況報告を聞くまでは。



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