バーテンダー
三十女は、こうなるともう……噛みつくとなかなか離れないスッポンと化すんだ。
「じゃあ……今夜、ずっとわたしと一緒に居てくれますか?」
そう言ったわたしの視線をチラリと逸らした。
逸らした先を見ると、四つ離れた席に、長髪を金髪に染め上げ、少し、歪んだ眼鏡を掛けている男が座っていた。
長い髪を一つに束ね、どう見ても痛い中年男性だった。
中年+長髪の金髪=世の半端者の公式を身体で現わしていた男性に視線を向けたバーテンダー。
その顎に手を伸ばして無理やりこっちを向かせ
「名前……聞いていいですか?」
「僕ですか? 僕はタモツといいます」
わたしの強引な行動に困ったように眉を八の字に曲げた。