バーテンダー
テレビの音だけが響く、二人だけの空間。
無言になった彼の肩へと、コツリと頭を乗せた。
そう言った行動が何を意味するのか、もう、子供じゃないのだから分かっている。
それは彼も同じで……
二人の間にあった距離がなくなった。
彼の手がガシリ肩に回され、それに答えるように顔を上向かせた。
唇を塞がれた。
軽く、軽く始まったキスは、徐々に深くなり、いつしかそれは眩暈をさそうものとなった。
五年前は、もっと強引にわたしを求めて来たのに、もしかしたら、そうした自分を反省したのかも知れない。
心地良い長いキスの後、彼の胸に顔を埋めて、五年前なら絶対に自分から言えなかった言葉を吐いた。
「今夜は、ずっと傍に居て下さい」
fin