キミの風を感じて
「ゴメン、立木さん」
加島くんが軽く息を吐いた。
「まだ早いけど、今日の練習終わってもいい?」
「あ、うん。大丈夫……だよ」
「悪い」
小さく言うと、彼はフェンスに向かって歩き出した。
自分のバッグを取り、部室へと引き上げていく。
2週間近くを毎朝一緒に過ごしたんだから、わたしにはわかるよ。
普通にしているように見えるけど、福本さんの言葉は彼の胸に刺さったままだ。
顧問の先生のこと、記録のこと、転校のこと、そして逃げてると言われたこと……。
わたしなら真っ先にユメちゃんのところに飛んでって、泣いたり怒ったりしてぶちまけちゃう。
ユメちゃんはきっと、わたしが楽になる言葉をかけてくれるね。
だけど、加島くんはそうじゃないんだ――。
おそらく誰にも話さない。