キミの風を感じて

ひと気のない校門を抜けて、ふと気がつくと、向こうの渡り廊下にポツンとひとり、ジャージ姿の男子が見えた。


……加島くんだ。




校舎と講堂をつなぐ屋根つきの廊下。


グランドのほうへと突き出したそのコンクリの上で、彼は黙々とトレーニングを続けていた。


いつもの筋トレ。


背筋、もも上げ……。




くつ箱のほうへ行きかけていた足が止まり、加島くんがいる廊下に向かって歩き出したとき


「あっ」


と一瞬息をのんだ。


加島くんが突然どしゃぶりのグランドに飛び出したんだ。




雨に打たれながらスタートの体勢を取り、そこから一気に駆け出していく。


全力疾走。


力強く、一直線に――。




彼が足を踏み出すたびに、バシャバシャと水しぶきがあがっていく。


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