キミの風を感じて
「わからないんだ、俺……。あの頃の走りと今の自分が、どうちがってんのか」
絞り出された声が雨音にかき消されていく。
加島くんの頬を伝う雨のしずくは、まるで涙の粒のように見えた。
こんな加島くんは初めてだ。
昨日の一件が、きっと彼を苦しめている。
「先輩に言われたことなんか気にすることないよ。あんなの、加島くんのことをやっかんでるだけじゃない?」
なんとか気持ちを和らげたくてそう言ったら、イラだった声が返ってきた。
「は? こんな俺のどこにやっかむ要素があんの?」
やっとあげた顔は、とても怖い表情で……。
目に見えないものがじりじりとと加島くんを追いつめている。