キミの風を感じて

だからこそ、余計福本さんの言葉が痛かった。


俺のせいで吉崎が顧問をはずされる。


走れない自分が、こんなふうに誰かに害を与えているなんて、思いもよらないことだった。




期待を裏切る後ろめたさも、走れないみっともなさも、ただ自分にだけ降ってくるもんだと思っていたから


それぐらいかぶる覚悟ならできていたんだ。




走れない俺とつきあうのは、俺だけでよかった。




開き直って
逃げずに

走れない自分と向き合ってきたつもりだったのに。


――つもりだっただけで、
俺はやっぱ逃げてんだろうか……?




自己ベストを出してすぐにスランプに陥り、有名校からの引き抜きの話なんて具体的に考えたことはなかった。


走れないままそんなところへ行ったって、自分の居場所があるとは到底思えなかった。




ここに……

築いていると信じていた俺の居場所は、


ただの逃げ場だったというのか――。


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