キミの風を感じて
「鈴木くんの言う通り、どんなもんだかわかんなきゃ困るよね?
わたし練習したから息切れしないで走れるようになったけど、やっぱりまだ遅くて、みんなの足を引っぱっちゃうと思うんだ」
立木さんは意を決したように鈴木のことを真っ直ぐに見ている。
「だけど精いっぱい走るから、それがどんな程度なのか知ってもらって、あとはみんなでフォローして下さい。……ゴメン!」
みんなに向かってちょこんと頭を下げた。
結んだ髪がふたつ遅れてピョコンと跳ねる。
「ゴメンはいらないよ」
本荘が言った。
うんうんと、うなずいているやつもいる。
そんなみんなが見守る中、立木さんはトコトコ小走りでスタート位置についたんだ。
よく練習で使ったトラックを半周。
そのスタートラインにひとりで立ち、今、大きく息を吸い込んだ。