キミの風を感じて

「鈴木くんの言う通り、どんなもんだかわかんなきゃ困るよね?

わたし練習したから息切れしないで走れるようになったけど、やっぱりまだ遅くて、みんなの足を引っぱっちゃうと思うんだ」


立木さんは意を決したように鈴木のことを真っ直ぐに見ている。




「だけど精いっぱい走るから、それがどんな程度なのか知ってもらって、あとはみんなでフォローして下さい。……ゴメン!」


みんなに向かってちょこんと頭を下げた。


結んだ髪がふたつ遅れてピョコンと跳ねる。




「ゴメンはいらないよ」


本荘が言った。


うんうんと、うなずいているやつもいる。





そんなみんなが見守る中、立木さんはトコトコ小走りでスタート位置についたんだ。


よく練習で使ったトラックを半周。


そのスタートラインにひとりで立ち、今、大きく息を吸い込んだ。


< 119 / 375 >

この作品をシェア

pagetop