キミの風を感じて
きっとここにいるメンバーには及ばないんだろうけど、でも、あとひと枠に出場してほしいと松山が誘っていたやつらには、絶対に負けない走りだった。
立木さんのひたむきさが伝わる100mだった。
「すっごーい、紗百ちゃん。やるじゃん」
「短い間にがんばったんだね、紗百。すごい成長だよ」
「おう、勇気もらった。がんばろうぜ、俺たちみんなで」
みんなに囲まれて声をかけられて、額の汗をぬぐった彼女は
「やっぱ、息切れするかも」とはずかしそうに笑った。
鈴木はその輪の中には入らなかったけど、でも、
輪の外側から立木さんに声をかけていた。
「まー、どんなもんかは、だいたいわかったから」ってそれだけ。
それだけ告げて、もうこっちに向かって歩いてくる。
それってさぁ……わかったからフォローしてやる、って意味なんじゃねーの?