キミの風を感じて
放課後――
陸上部の後練が終わって、一年生がグランドを片づけ始める。
日の落ちるのがずいぶん早くなって、オレンジに輝いていた空はもうすっかり薄墨色に変化していた。
この前の大会でほとんどの3年生が引退したけれど、まだ部活を続けている先輩もいる。
進学先でもずっと陸上をやっていく人たちなんだと勝手に思っている。
福本さんもそんなひとりだった。
「キャプテン」
グランドを引きあげていく長身の背中を後ろから呼び止めた。
「あの……」
福本さんは足を止め、俺にチラッと視線をくれる。
「俺、走ります」
「うん?」
「今度の大会、精いっぱい走ろうと思います」
それだけを伝えたかった。