キミの風を感じて

どう走ればいいのか?

どこで走ればいいのか?

こんな思いをしてまでも、なんで俺は走るのか?




考えても、悩んでも、結局答えなんか見えなかった。




だけど今朝、立木さんが走るのを見て思ったんだ。


ただ思いっきり走ろう、って

あんなふうに風をまとって……。




今までだってレースのたびに精いっぱいやってきたつもりだけど、今は何かがちがう。


ただ、走るのが心地いい。


さっきまで練習で走っていたくせに、まだまだずっと走っていたい気分だった。





「それだけ?」


怪訝な顔をして次の言葉を待っていた福本さんに、俺は小さく頭を下げた。


「えっと、今はそれしか答えられなくて……」


先輩が軽く息を吐く。



「答えは風の中、か」




いい結果が出ても、出なくても

きっと何かが見つかる気がしていた。




走り出したその風の中で――。



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