キミの風を感じて
「加島くん」
5限目が終わったあと、教室の片隅でわたしはやっと加島晴人に声をかけた。
加島晴人 (カシマ ハルト) ――
通称“100のプリンス”
我が2Aのもうひとりの体育委員で、わたしをリレーの選手に選んでおきながら放置中の人。
話すのはたぶん初めてだけど、自然と視線に恨みがこもる。
絶対に断ってやるからね。
みんながわたしに言い放ったように、わたしだって言ってやるんだ。
『リレーなんて絶対に無理!』って。
窓際の一番前の彼の席。
大きく開け放たれたガラス窓の向こうには、秋晴れの空高く、うろこ雲が広がっていて、
机に片ひじをついてあごを乗せ、彼はぼんやりとそれを眺めているところだった。