キミの風を感じて
「ちょっといいかな?」
わたしの問いに、ほおづえをついたまま、加島晴人は目線だけをこっちに向けた。
眉にかかる前髪を無造作に分けた短めの髪。
鼻筋が通ったすっきりとした顔立ち。
陸上部で活躍してるのは知ってるけれど、どっちかっていうと文化系っぽい知的な印象が残る。
ただ無遠慮に向けられた黒い瞳だけが、やけに勝気そうで圧が半端ない。
「えっと……」
その目に気を取られて、一瞬、何を言うのか忘れそうになった。
爽やかな秋の風がふんわりとカーテンを揺らしていく。
いかん、いかん。
ひるむな、ひるむな。
ここで怖じ気づいたらもうあとがない。
ま、負けるもんか。