キミの風を感じて
だけどいつものそういう顔よりも、もっと表情が硬くて、声がかすれていた。
「や、全然」
バカ、もっとなんか言え。
君が無事ならそれでいい、とかそーゆーやつ。
「頭打ったやつは念のため病院に行く決まりなんだって。保健の先生が言ってた」
「そう……」
「なんともないから」
「うん」
そんなことしか言えない俺に小さくうなずいた立木さんは、きっと笑いかけてくれたんだと思うけど、それは全然笑顔には見えなくて……。
もう一度「ゴメンね」とつぶやき、青ざめた顔のまま彼女は俺の横をすり抜けていった。
目の前で気を失ったりして、ずいぶん怖い思いをさせてしまったんだろうか……?
ふと見あげると廊下の窓に、去っていく彼女の姿を目で追う高梨が見えた。
坂田も夢崎さんもいなくて、今日はあいつ1人で立木さんが走るのを見ていたのかもしれない。