キミの風を感じて
「加島くん体育委員だよね? 体育祭のエントリー種目、変更してもらいたいんだけど」
よし、結構強気に上から言った。
だけど加島晴人は姿勢も表情もいっさいくずさずに、ジッとわたしを見あげている。
「……今から?」
ぶっきらぼうな態度がそのまま声になった。
う……。怖いよぉ。
蛇ににらまれた蛙のようになって、次の言葉が出て来ない。
「松山さんに訊いたら、加島くんに相談してって言われたんだよね~」
横から付き添いのユメちゃんが口をはさんでくれた。フゥ……。
加島くんは無言で机の中をのぞき込み、オレンジ色の薄っぺらな冊子を取り出す。
「もうこれ刷っちゃったしな」
取り合うのもめんどくさそうに加島くんは言った。
「こ、困るよ。わたし足遅いのにクラス対抗リレーに出ることになってんの」
「ああ……。だな」