キミの風を感じて

『何やってんだ、このウスノロ! 加島に何かあったらお前のせいだからな!』


加島くんから引きはがしたわたしをグランドへ投げ捨てるようにして、ゴリリン先輩が怒鳴り声をあげた。




『こいつが誰だかわかってんのか? 加島晴人だぞ。日本の宝、いや世界の宝だ。走れなくなったらどーすんだよっ』


『あれ? 鈴木、いつからそんな加島びいきになってんの? だいたい脳しんとうぐらいで走れなくなるかっての』


他の男子がそう茶化してくれたけど、先輩は言葉をやわらげなかった。




『足ひねったかもしれないし、腰だって地面に叩きつけられてんだ。

ちょっと痛めただけでも取り返しがつかねーんだぞ。あいつはコンマ01秒の世界で生きてんだからなっ』




そう睨みつけたゴリリン先輩の顔よりも怒鳴り声よりも、言われた言葉に心が震えた。


どうしよう……。
加島くんがケガしてたらどうしよう……って。


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