キミの風を感じて
「どーする、紗百。やっぱ帰んの?」
そのとき突然、目の前で坂田くんの大きな声がした。
「わっ」と驚く高梨くん。
気がつけば、そこはもう駅で
カラオケ店はこのまま踏切を渡ってすぐのところだった。
「あ、うん。帰る」
それから何か言いかけていた高梨くんを仰ぎ見た。
「えっと、何だっけ?」
「あ、いや……また今度、な。
明日がんばれよ。応援してやっからさ」
「うん!」
「あれ? 俊介体育祭パスすんじゃねーの? くそダリィとか言ってなかったっけ?」
と横から坂田くんが言う。
「うっせーな。がんばってるみたいだし、紗百が走んの見てから帰るんだよ」
高梨くんがムスッと答えた。
「プハッ。こいつ去年もサボったから知らないんだぜ。紗百が走るリレーはプログラムの一番最後だからな」
帰れねー、と坂田くんに笑われる。