キミの風を感じて
「マジか。じゃあ昼から来よっと」
そこはひるまず高梨くんは言った。
「えっ、ダメだよ、高梨くんだって何か走ることになってるんでしょ?」とわたし。
「いーのいーの、どーせ100m走だし。どこのクラスにもサボるやつがいるから、ちょうどいい人数合わせになんだよ」
なんて彼は平然と言う。
熱いんだかゆるいんだかわからない高梨くんって、やっぱちょっと変わってるかも。
だけどガチガチだった自分の心が、彼のおかげで少しだけ楽になっていた。
3人に別れを告げて駅の改札を抜ける。
すいている電車のシートに座り込み、ガタゴトと揺られながら窓の外の風景を眺めていた。
今日一日の出来事が景色と一緒に流れていく。
加島くんがわたしをかばって脳しんとうを起こしたときのこと。
抱きしめられた腕の中。厚い胸。
ゴリリン先輩からの罵倒。
輝いているみんなへの劣等感。自己嫌悪。
本荘さんに向けた加島くんの笑顔――。