キミの風を感じて
ぽっかりと空いた夕方の時間。
窓の外に広がるどこか懐かしい街並み。
カーンカーンと、
電車の音に混じって聞こえる遠い踏切の音。
ずっと……
何もない自分に気づいていないわけじゃなかった。
だけど日々楽しくて
まともに向き合おうとはして来なかった。
リレーの練習を通して、加島くんと接して
わたしの心の中で何かが変わったのかもしれない。
陸上に対して、たったひとりっきり
決して逃げない決してブレない
ひたむきな彼の姿勢。
真っ直ぐな黒い瞳――。
そんな加島くんと釣り合うものが欲しかった。
話せるものが何もなくて恥ずかしかったよ。
高梨くんが言うように
焦らなくてもいいのなら
人それぞれでいいのなら
わたしもいつか何かを見つけたいな……
そう思った。