キミの風を感じて

『俺、そんな時間をなかったものにはしたくないんだ。明日はみんなで思いっきり走ろう』


『うん』


『だから……』


そこでスッと、加島くんが息を吸い込む音が聞こえた。




『立木さん、明日は笑ってくれる……?』




う……。そんなことを言われたら泣く。




『うん……!』


大きくうなずいてジーンと感動していたら、加島くんがポソッと言った。




『じゃ』




おわっ、も、もう切っちゃうのか?

さすが無愛想なプリンス。




『か、加島くんっ』


『え』


『あ、あのっ、電話ありがとう』


『いや……』


と少し口ごもってから、彼はフッと息をもらした。


『苦手なんだよ、電話。言葉が全然出て来ない』


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