キミの風を感じて

俺も片手を下ろしたまま、腰の辺りでグーをして見せると、それを確認した彼女は、クラスの観覧席に向かって跳ねるように駆けて行った。




「おい、加島ってば。……聞いてた?」


「え、うん。ゴールの着順係だろ」




クラスで2名ずつの体育委員からなる体育祭の実行委員っていうのは、体育祭のこまごましたことを決めたり準備したり進行したりする係だ。


それに加えて俺たち陸上部員は、毎年体育祭でその実行委員を手伝うことになっている。


陸上競技に詳しいからということらしいけど、まぁ習慣化された役割だ。


どうせやる仕事なんだからと、春、新クラスの各委員を決めるとき、同じ陸部の松山から一緒に体育委員をやろうと誘われた。


ほかの委員を押しつけられるくらいなら『まだマシじゃない?』という松山らしい合理的発想で、結局俺もそれにノッたわけだ。


おかげで今回立木さんと親しくなれて、かなりの役得だったと思う。




いや、親しく…………なれた、よな?


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