キミの風を感じて

ふと、さっきの加島くんの冷たい指先を思い出した。




あの“100のプリンス”が緊張していた。


いつもそうだって、
ホントは逃げ出したいんだって……。




陸上部の先輩からぶつけられた言葉。


雨の中飛び出したグランド。


“プリンス”だなんて言われたって、順調にここまで来たわけじゃなかった。


プレッシャーも中傷も容赦なく加島くんを襲う。


それでも走ることをやめないんだね?




彼の強さを
ひたむきな努力を思う。


弱さや怖さを知っている人こそが、本当に強い人になれるんだ……。




わたしは自分の弱さとも強さとも、
あんなふうに向き合ったことはなかったけれど、


せめて今日は逃げずにいたいと思った。




加島くんに比べたら、強くなる決意も覚悟もほんのちっぽけなものしか持ってはいないけれど、


今日は取りあえず、加島くんの笑顔が見たいからがんばるよ……!




それが一番、強くなれる気がした。


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