キミの風を感じて
「「あっ」」
そう思ったとき、ゴリリン先輩の足がもつれて、巨体が地面に叩きつけられた。
えっ? こ、転んだ!?
「「あ――…っ」」
観客席からもれるため息。
起きあがった先輩が、転がったバトンを拾いに行ってる間に、あんなに開いていた差はつめられ、それどころかなんと2人に抜かれていた。
次のランナーも、もうすぐそこまで来ている。
それでも負けずに、先輩はものすごい形相で駆け込んできた。ヒェ……。
なんとかバトンを受け取り、わたしは走り出す。
あ!
細身の背中がすぐにわたしを追い越していった。
ヤバい、このまま全員に抜かれちゃうかも。
ドクドクと心臓がうるさい。
頭が真っ白……。
『何があっても待ってるから』
空っぽの頭の中に、加島くんの声だけが蘇った。