キミの風を感じて

「加島―っ、行け――!」




飛び出した加島くんは


低姿勢で風を切り、そのまま加速していく。




速い……!




あっという間に1人抜き、2人目をとらえた。




徐々に起こす上体。




力強い足運び。




3人目の背中にもうすぐ追いつきそうだ。






うぉん……と、場内の歓声がひとつの音になる。




今、最後の一人を振り切って、




そのまま


白いテープを切り、全力で駆け抜ける――。




キャーッと声援が飛んだ。




「「やったぁ、優勝――っ!」」




応援席はすごい熱気。




わたしはトラックの上で、まだ肩で息をしながら、その光景をただポカンと眺めていた。




あいつは……


風みたいだったよ。





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