キミの風を感じて
疲れているんだけど、体の奥はまだ興奮冷めやらない感じで、ひとりでぼんやりしているのが心地よかった。
レースが終わってから、加島くんとはまだゆっくり話せてない。
人気者のプリンスさんと話す順番は、わたしにもまわってくるのかな?
そうしたらまずお礼を言って、
それからおめでとうって言って、
それから……。
「立木さん」
いきなり頭上から声が降ってきた。
「あれ? 加島くん?」
「あれ、じゃないよ」
ムスッと言う。
「急にいなくなるから帰ったかと思うだろ?」
そう言って彼はストンと、わたしの隣に座った。
「誰かに持ち帰られたかと思ったし」
「え?」
「焦った……」
ひとり言みたいにつぶやく。