キミの風を感じて

「おーい、加島―? あれ、どこ行った?」


ベンチを隠すように枝を張った木々の向こうから、ヌッとゴリリン先輩が姿を現した。




「おお、いたいた。どこ行ってんだよ、主役が」


そう言った先輩は「ん?」と怪訝な顔をする。




「何やってんだ、お前ら?」


「……何も」


あわてて立ちあがり、ベンチの前で2人並んで突っ立ってる姿は、やっぱ不自然に見えたみたい。




「悪い、今行く」


加島くんがスッと足を踏み出し、ゴリリン先輩と並んで歩き出した。


「立木も来いよ」


振り向いた先輩がそう呼んでくれる。


うわ……、いつも『ウスノロ』とか『この女』とか呼ばれていたから、名前で呼ばれるのは初めてかも。




小走りで追いつき、歩き出した加島くんの横顔をチラッと盗み見たけれど、何ごともなかったように彼はお得意の無愛想な顔をしていた。


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