キミの風を感じて
『勝利の女神がいなくてもちゃんと走れるか、自分だけでやってみるよ』
『はぁ……』
『わかってないだろうけど、体育祭であんなふうに走れたのは立木さんの力だよ。君がいてくれたから普段の何倍もの力で走れたんだ』
『そうかな?』
『だけど明日は今シーズン最後のレースだし、今まであがいて積み重ねてきた自分の走りを、思いっきり走ってみたいんだ。その結果を見届けたいっていうか……』
『ふうん』
『俺、ヘンなこと言ってる?』
『ううん、真面目……なんだね』
『あー、まぁ』
ホントはわかってるよ。
顧問の先生のこととか、転校のこととか、
明日はきっと特別なんだよね。
きっとひとりで何かを見つけたいんだよね。