キミの風を感じて

陸上部の先輩の言葉からも、他のいろいろなことからも、いつも逃げずにひとりで戦ってきた加島くんらしい言葉だった。


体育祭で見た加島くんの走りがわたしの力だなんて、これっぽっちも思わないけど、普段通り淡々と真っ直ぐにレースに臨んでほしい。




『じゃあ、家で祈っとくね』


そう言うと彼は初めて少し申し訳なさそうな声になった。




『春になったらたくさん大会があるから、そのときは応援に来てくれる?』


『うん!』




それから少し話をして、短い電話のおしまいに加島くんはこう言ってくれた。




『明日、終わったら電話するから』


『うん。しっかりね』


なるべく明るい声でそう言ってわたしは電話を切った。


< 222 / 375 >

この作品をシェア

pagetop