キミの風を感じて
陸上部の先輩の言葉からも、他のいろいろなことからも、いつも逃げずにひとりで戦ってきた加島くんらしい言葉だった。
体育祭で見た加島くんの走りがわたしの力だなんて、これっぽっちも思わないけど、普段通り淡々と真っ直ぐにレースに臨んでほしい。
『じゃあ、家で祈っとくね』
そう言うと彼は初めて少し申し訳なさそうな声になった。
『春になったらたくさん大会があるから、そのときは応援に来てくれる?』
『うん!』
それから少し話をして、短い電話のおしまいに加島くんはこう言ってくれた。
『明日、終わったら電話するから』
『うん。しっかりね』
なるべく明るい声でそう言ってわたしは電話を切った。