キミの風を感じて


日曜の夕方ケータイが鳴った。




『か、加島くん?』


『ちゃんと走れたよ』


彼はそれだけを教えてくれた。




『ホントに?』


『ああ、記録更新。気持ちよかった』


辺りはざわめいていて、かき消され気味だったけれど、加島くんの声は明るく響いてくる。




『よかったね。スゴイね』


『ありがとう』


電話口の向こうで加島くんを呼ぶ声がして、『じゃ明日な』って電話は切れた。




やったぁ……!

よかった、加島くん!






だけど彼の言った『記録更新』の意味の大きさを教えてくれたのは、その晩のテレビのニュース番組だった。


スマホをいじりながら何気なく聞いていたテレビから、『加島晴人』って名前が突然耳に飛び込んできたんだ。


『○○高校加島晴人選手が100m走でジュニア新記録を樹立しました』って。


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