キミの風を感じて
「ええっ」
そっか、そういうことか。
メディアからは特に注目されてなかったようで、画面では素人が撮ったホームビデオのような映像が流れている。
うちの陸上部の人が撮ったやつかもしれない。
ス、スゴイ……。
加島くんの走る姿を食い入るように見ていると、テレビのアナウンサーが彼の戦歴を淡々と紹介していく。
加島くんが去年の新人戦で頭角をあらわしたこと、以後低迷していたけれど、今日見事に復活を果たしたこと。
それから、短距離はもうシーズンオフになるけれど、今ジュニアには有望な選手がひしめいていて、春からの来シーズンがとても楽しみだと締めくくった。
「あらこれ、紗百の学校の子じゃない? ほら、あの全然しゃべらない」
キッチンからやってきたお母さんが大きな声をあげた。
そうだよ。無愛想で言葉足らずなプリンスです。
おめでとう、スゴイよ、加島くんってば……!